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区切り符合(3回シリーズその3)

第029号(1997年12月18日)

技術部フォント管理開発課
吉田 桂子


クォーテーションマーク

区切り記号に関する話題の最終回として、クォーテーションマーク(引用符)を取り上げたいと思います。

英語から入ってきたシングル‘ ’とダブル“ ”クォーテーションマークが日本語の文章の横組みでもよく使われています。ここで「欧文」ではなく「英語」からと言ったのは、言語によってクォーテーションマークとして使う符合が異なっているからです。たとえば、フランス語とイタリア語では《 》(ギュメ)が使われ、ドイツ語では反転したダブルクォーテーションやノノカギに似たプライム(primes)が使われます。また、起しと受けを入れ換えたギュメが使われることもあります。

「The Chicago Manual of Style」(13th Edition)によると、英語における基本的なシングルおよびダブルクォーテーションの使い方は次のように定義されています。

  • 引用された言葉やフレーズ、センテンスをテキスト中に入れるときはダブルクォーテーションで囲む
  • 引用中の引用はシングルクォーテーションで囲む(ただし、英国ではしばしばシングルが外側、ダブルが内側という反対の使われ方もする)

では、日本語に固有の引用符はどうでしょう? 前回でも引用した『くぎり符合の使ひ方[句読法]案』(昭和21年3月、文部省教科書局調査課国語調査室)は、区切り符号の分類で「もっぱら横書きに用ひるもの」の中に「引用符(カコミ)」として丸括弧と二重丸括弧、ノノカギ風の符号の3種類をあげています。ここでは「引用符(カコミ)」とされているように、一般的に私たちが認識している引用符とはちょっと違うようです。一方、かぎ括弧「 」と二重かぎ括弧『 』については、以下のように説明しています。

…………

(6)カギ「 」 フタヘカギ『 』

    一、カギは、対話・引用語・題目、その他、特に他の文と分けたいと思
      ふ語句に用ひる。
      これにフタヘカギを用ひることもある。

    二、カギの中にさらにカギを用ひたい場合は、フタヘカギを用ひる。

    三、カギの代りにを用ひることがある。
      をノノカギと呼ぶ。


…………

何をもって“引用符”と呼ぶかによるのでしょうが、機能面や一般的な使われ方から考えると、かぎ括弧「 」と二重かぎ括弧『 』、さらにノノカギを日本語の引用符と考えて差し支えなさそうにも思えます。ちなみに、フォントワークスの書体の横組み用のノノカギ(区点1364、1365)は起し・受けとも上にくる、ダブルクォーテーション風のものになっています。受けが下にくる通常のものもPlus書体の外字に入っています(区点9688、9689)。

シングルおよびダブルクォーテーションに話を戻しましょう。特にダブルクォーテーションは日本語の横書きでもよく使われていますが、縦書きの場合はどうでしょう? Macintosh用のPS書体には、横組みと縦組み用のシングル・ダブルクォーテーションが用意されています。しかし、なぜか下の図のように文字位置が同じになっています。

文字位置がおかしいので、縦組みでダブルクォーテーションを使えと言われると困りますよね。右の図のように悲惨なことになります。そのままでは使い物にならないので、色々と手を加えてみることになりますが、それでもすっきりしません。ちなみに、フォントワークスのPlus書体にはもう一組の縦組み用のダブルクォーテーション(つまり全部で3組み)が入っています(区点10268、10269)。しかし、「ことえり」などの文字パレット上では黒豆腐状態なうえ、コード入力しても画面には表示されません。プリントするとようやく現れるという“隠れた”存在です。この隠れ記号を使えば、なんとか“それ風”の縦組みにはなります。それでもやはり、何だか変です。やはり、通称“チョンチョン”と呼ばれている縦組み用のノノカギ(区点9164、9165)を使うのが一番無難なようです。
英語の文章では“いわゆる何々”とか“いわば何々”(つまり言葉通りには受け取るべきでないこと)をダブルクォーテーションで囲うことがあります。特に米国人の中には、話をしながら、両手の人差し指と中指でダブルクォーテーションを真似たジェスチャーをする人がいますよね。これも、言っていることが“いわゆる何々”だということをジェスチャーで示しているわけです。日本語の文章でも同様のダブルクォーテーションの使い方ができそうです。横組みに限られてしまうのかもしれませんが、シングル・ダブルクォーテーションも、かぎ括弧類とうまく使い分けると、文章の表現がより豊かになるかも知れません。


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